葛飾北斎が約200年前に描き上げた世界で最も有名な浮世絵のひとつ『神奈川沖浪裏』は、西洋において日本文化の象徴と見なされているが、偶然にも神奈川は角田裕毅が生まれ育った場所でもある。F1デビューレースとなった開幕戦バーレーンGPで角田は北斎の波のような大きな才能を発揮した。

バーレーンGPで9位入賞を果たした角田は母国日本でスター的な地位を得て、新聞各紙の一面を独占した。開幕戦のこのリザルトはまた、角田がF1デビュー戦でポイントを獲得した唯一の日本人ドライバーとなったことを意味している。この結果、角田はデビュー戦で入賞したドライバー64人の仲間入りを果たすことになった。ちなみに、過去にスクーデリア・トロ・ロッソに在籍したセバスチャン・ブルデー(2008シーズン)、ダニール・クビアト(2014シーズン)、カルロス・サインツ(2015シーズン)もデビュー戦入賞を記録している。バーレーンGP決勝日、角田は20歳10カ月17日日本人ドライバー史上最年少F1出走を果たすと同時に、日本人F1ドライバー史上最年少ポイント獲得を記録した。

角田はバーレーンGP決勝で13番グリッドに並び、注意深くスタートしたあとは冷静で勇敢なドライブを披露した。素晴らしいスピードに決断力の高さを組み合わせた角田は10番手まで浮上すると、遥かに上回る経験を持つランス・ストロール(アストンマーティン)を相手にファイナルラップまでバトルを展開して9位を手に入れた。

日本人ドライバーがF1グリッドに並ぶのは実に7年ぶりだったこともあり、数万人もの日本人ファンの希望と期待を背負ってレースを戦っていることは本人も良く理解していた。F1の長い歴史の中で、このカテゴリーにエントリーした日本人ドライバーは24人しかいない。エントリー数が膨れ上がった1980年代〜1990年代には予選落ちが存在していため、一部のドライバーは一度も決勝出走を果たせなかった。角田の直前にF1を戦った日本人ドライバーは、2009シーズンから2014シーズンにかけて75戦に出走し、2012 シーズン日本GPでの表彰台フィニッシュを含む通算125ポイントを記録した小林可夢偉だ。

小林以外にF1での表彰台を獲得したドライバーはわずか2人だけで、1990シーズン日本GPで鈴木亜久里(ローラ・ランボルギーニ)が、2004シーズンアメリカGPで佐藤琢磨(BARホンダ)がそれぞれ3位を記録している。実は、角田のカーナンバー22は佐藤へのリスペクトだ。F1での活躍のおかげで日本での佐藤人気は非常に高い。現在でも佐藤はF1ラップリード記録(2周)を持つ唯一の日本人ドライバーであり、2017年と2020年にはあの伝説的なインディアナポリス500で優勝している。

史上初の21世紀生まれF1ドライバーとして、今度は角田が活躍する番だ。バーレーンGPで初のポイントを目指して激しく戦い抜いた角田はシーズンを通じてさらなる活躍を見せてくれるだろう。